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その男Glass-Jaw-Hopperグラス・ジョー・ホッパー

荒野に消えた38口径

ブッシュの親父が1回目の中東で戦争をおっぱじめようとしていた1年前・・・・・

大陸の端っこの砂埃舞う街でチコとぺぺは何でも屋の手配師でその名を知られていた・・・・・・



せこい仕事を人に回してピンはねする奴等・・・・・・


本人らは「カンパニー」なんて言っているが、持って来る仕事は下請けの下請け、そのまた下請けの安い仕事ばかり・・・・・

大抵は食いっぱぐれている流れ者を使って安い仕事をさせる・・・・・


俺もその時は免税店の営業職にありつく前、その日その日のハンバーガーとビールそして宿代を稼ぐ毎日・・・・・

ある日は「トモアーキ」と言う日系人らしき男を探し出してホセとか言う男の元に連れて行けだの、ある日は男をある地点で受け取り確実に誰それに引き渡せだの、どっかまで行って乗り捨てられた車を取りに行き運転して戻って来いだの・・・・・まともだった仕事はレンタカーの回収ぐらいだ・・・・・

とにかくあまりかかわるとヤバそうだった。


ある日また呼び出されてブリーフケースを渡され、これをどこぞの誰かに渡せって仕事を回してきた・・・・・・

また怪しい匂いがした・・・・・・


俺はオンボロフォードでその「荷」を運んだ・・・・・
運転しながらも助手席のブリーフケースの中身が気になった・・・・・

以前「トモアーキ」を連れ出すのに相手がガタガタ言ってトラぶったらこれで脅せと拳銃らしき物を渡されて断わった事があった・・・・・


大きさ重さから判断するとまた拳銃?

合法的に手続きされた物とは到底思えない・・・・・・


荒野の一本道の脇にオンボロフォードを停車し中身を見てみた・・・・・

ずさんな依頼主はブリーフケースに鍵すら掛けていない・・・・・

出てきたのは無造作にブリーフケースに放り込まれたリボルバーの拳銃・・・・・・・
荒野に消えた38口径_c0083518_21283577.jpg

指紋等痕跡が残るのを恐れて触りはしなかったが、モデルガンにしては妙な重厚感と不気味な威圧感・・・・・・

くすんだボディに不釣合いな妙に真新しい光を放った銃弾の一部がリボルバーの隙間に見えた・・・・・・


まったくずさんな奴等だ・・・俺が万が一スピードオーバーでポリスに停められて職務質問と持ち物検査でもされたらどうしたんだ?

彼等にしてみたら流れ者の東洋人がどうなろうが知った事じゃないだろうが・・・・・




俺はマルボロを一本出して、使い古したジッポで火をつけて一服した・・・・・

どうしたものか・・・・・・

時間をかけて吸う・・・・・時々停車した俺のオンボロフォードの横を埃まみれのピックアップトラックやら見慣れた一昔前の型の日本車が怪訝そうに俺を覗いて砂埃を舞い上げ通り過ぎて行く・・・・・

外国人には絵になる荒野も現地の人たちにしてみればサッサと通り過ぎたい場所なのだ。

そんな足早に去って行く車のテールを見送りながら深く煙を吸い込む・・・・・

地平線まで続く道を走る車はいつまでも視界から消えない・・・・・そしてある瞬間フッと陽炎みたいにボディカラーを滲ませて、ぼやけて消える・・・・・



頭上にはやたら青い空が広がり、その下には赤土の荒野・・・・・
音が割れたカーラジオからはブルース・スピリングスティーンが更に割れた声で歌っている・・・・・


どうしたものか・・・・・・


素性の悪そうな38口径・・・・・
到底ガンマニアのコレクションに加える為の拳銃ではなさそうだ・・・・・


誰かの手に渡り、その誰かが誰かを撃つ為だろう・・・・・・もしくは銀行強盗にでも使うのか?



誰かこの拳銃で撃たれる・・・・・誰だかはわからない・・・俺の知らない誰かだ・・・・・・


でも俺がこれを運ぶ事によって、その誰かは撃たれるのだ・・・・・・

脅す為だけかも知れない・・・・・でも撃たないとは限らない。


俺は吸っていたマルボロを車の灰皿に捨てて車のドアを開けて外へ出た・・・・・


オンボロフォードの後に回りトランクを開けた・・・・・このフォードはドアを開ける時もトランクを開ける時も耳障りなキーキー音を出す・・・・・・その音が嫌でなるべく開けたくないトランクから俺はスコップを取り出した・・・・・

何故かこのオンボロフォード買った時から入ったまんまの古い錆びたスコップ・・・・・

使うつもりは無かったが、捨てる事もあるまいとそのままにしていたのだ。




俺はその錆びたスコップを持ち、ブリーフケースを持って荒野に入って行った・・・・・

絵葉書なんかだと何も無い奇麗な荒野に見えるが、実際歩くと一体いつからそこに捨てられているのかわからない化石になり損なったペットボトルや洗剤の容器がゴロゴロ落ちている・・・・・

俺はある地点まで歩くとそこで穴を掘り出した・・・・・
随分深く掘るとそこにブリーフケースを埋めた・・・・・


意外と重労働だった作業を終えて胸ポケットからマルボロを取り出し火をつけようとしたが、愛用のジッポは車のダッシュボードの上に置いたまんまだったのを思い出した・・・・・



空が青かった・・・・・妙に青かった・・・・・・



俺は吸おうとしたマルボロをその埋めた拳銃の上の土に突き刺した・・・・・

乾いた土の上で何とも頼り無さそうだったが小さな小さな墓標が出来た・・・・・・
俺がこの墓標を作らなかったら、どこかの誰かの本物の墓標が一個出来たかも知れない・・・・・



俺はまたスコップをぶら下げオンボロフォードに戻りスコップをトランクに放り込んだ・・・・・

そして車のエンジンを掛けた・・・・・・






そしてそのまま俺はその街を出たのだった・・・・・・

アクセルは妙に軽かった・・・・・・





今頃はその拳銃は土の中で錆びて朽ち果て化石になっているのかも知れない・・・・・




※フィクションです



by glass-jaw-hopper | 2008-06-09 01:00 |

ガラスの顎のリスクでジャンプし続けるバッタ
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