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その男Glass-Jaw-Hopperグラス・ジョー・ホッパー

その時狙撃者の目は青白く燃えた・・・・・・

おじいが嫌いだった・・・・・

そうオトンの父親だ・・・・

オカンの芸術家肌一族と違ってオトンの一家は商売人・・・・・・

おじいは一代で商売を立ち上げた立志伝中の人ではあったが、身内からの評判はすこぶる悪かった・・・・・

特に男尊女卑が激しく、オトンの男兄弟の嫁・・・つまり伯母さんらからは嫌われていた・・・・・

輪をかけておばあも嫁をこき使うので、オカンはオトンの実家に顔をださねばならない日は朝から・・・いや前日から憂鬱そうであった・・・・・・

オトンの兄弟が集まる宴の日は台所は伯母さんらが右往左往していた・・・・・・


孫に対してはそれ程でもないが、嫁には厳しく、おばあからの電話でよくオカンが泣いているのを俺は子供心に悲しく胸を痛めていたのだ・・・・・・・


俺はお兄ちゃんお姉ちゃんの従姉妹らと遊べるので嬉しかったのだが、やはり台所でブーブー文句言いながらツマミなんかを作らされているオカンや伯母さんらを見るのは可愛そうに思ったりした・・・・・・

嫁らはまるで一昔前の黒人奴隷の女たちみたいに水場に集まって、ぶつくさ文句たれながらせっせと働いていた・・・・・・・

一番末っ子のオトンの嫁の一番若いオカンはその中でも立場が弱そうだった。



伯母さんの一人が、従姉妹らから離れて台所で突っ立っている俺に言った。
「ジョーくん、その鉄砲でじーちゃん撃っちゃえ〜」




小学校低学年だった俺はオモチャのピストルを握っていたのだ・・・・・・





小学生にして正式な殺しの依頼が・・・・・・・


俺は与えられた使命を遂行する事を決意した・・・・・・・

オカンや伯母さんらを苛めるおじいに天誅を!

私怨は無い・・・・・・俺はプロフェッショナルな殺し屋だ・・・・・・・
ちょっと前あまりに見事に禿げ頭のおじいの頭が触りたくてしょうがなくなって、座っているおじいの後ろから接近していきなりぺタッと両手で触った時、幼子に対しての態度を超えて烈火のように叱られた恨みは忘れた・・・・・

俺はプロフェッショナルな殺し屋だ・・・・・・・


俺はお気に入りのキャラ、次元大介の気分であった・・・・・・
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次元の歌は知らなかったので「じげん〜♪じげん〜♪」とルパンの部分を次元にしてやや痛い殺し屋はおじい、おばあ、叔父さん、オトンの狂乱魔界の宴に忍び寄って行ったのだ。


そして魔性の銃に弾丸を装填した・・・・・・
カチャリとスプリングを軋ませながらその特殊弾丸は装填された・・・・・・・
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俺はプロフェッショナルな殺し屋だ・・・・・・・

この魔性の弾丸をおじいの額の真ん中に撃ち込んでやる・・・・・・・・

俺はプロフェッショナルな殺し屋だ・・・・・・・


ヒットエンドラン、逃げ道の確保はしなかった・・・・・・

犯行後は潔く裁きを受けよう・・・・・・

これは天誅なのだ・・・・・・・正義なんだ・・・・・ボクがやらなけりゃ誰がやる?
誰がこの魔界の住人のように商売だけに精を出し、人・・・人民をないがしろにして女を泣かせ平気な一族に鉄槌を落とせるのだ???

幼い俺はまるで思い詰めた幕末の勤皇の志士だった・・・・・



その時狙撃者の目は青白く燃えた・・・・・・・・・・・


一発の銃弾が歴史を変える・・・・・


そろりそろりと酔っ払いだらけの宴会に入り込みターゲットのおじいに近付く俺・・・・・・・

あとちょっとで射程距離だ・・・・・・・・


もうもうと充満するタバコの煙の向こうにターゲットの下卑た俗物の笑い顔が確認できた・・・・・
いつもオトンの実家の商家の宴会は獣臭い牛肉の鍋の臭いと熱燗、タバコの臭いが充満している・・・・・

幼い子供には皆悪臭にしか過ぎない・・・・・・・そんな空間で酒に酔いゲラゲラ笑っているおっさんらは俗悪な者に見えた・・・・・・その総大将のおじい・・・・・・・・


俺はこのピストルの腕には自信があった・・・・・

まずこの距離ならば外さない・・・・・・・・



そして完全に射程距離に入った・・・・・・・

金歯を光らせゲラゲラ笑っている俗物大将・・・・・・・

場はおっさんらが酒臭い息を吐きながら盛り上がっていて俺の闖入も誰も気にしていない・・・・・・

ふとちょっと前に見た映画「ジャッカルの日」を思いだした・・・・・・
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殺し屋の狙撃手ジャッカルは演説中のドゴール大統領を狙撃したが、寸前にドゴールがパフォーマンスで地面にキスをして頭を下げたので弾がそれて狙撃失敗したってシーンだ・・・・・
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なーに、相手のターゲットはドゴールのように愛国心を表現しようとフランスの土地にキスするような洒落者では無い・・・・・・

卑しい商人、成り上がりだ・・・・・・・・



さぁ!正義の天誅を受けよっ!



ブッシュッ!
俺は引き金を絞った・・・・・・・
まるでサイレンサーの発射音みたいな音を残しながらおじいに向かって突き進む特殊弾丸!


その時信じなれない事が起こった

おじいはこぼれそうな自分の酒の杯をこぼさぬように口を付けすすろうと頭を下げたのだ・・・・・・
その下げた頭の上を通過し俺の放った特殊弾丸は後方の闇に消えた・・・・・・・

狙撃失敗!



幸い酔っ払いばかりで誰も今の凶行に気付いていない・・・・・・

グズグズしてはいられない!

俺はさっさと勤皇の志士を捨てて隣室の従姉妹達の場に紛れて逃げた・・・・・・
まるで天誅に失敗して京の民衆に紛れてあたふたと逃げる中途半端な志士である・・・・・・・


ドゴールは民衆に愛国心を示して助かり、卑しい成り上がり者はこぼしそうな手元の酒を惜しんで助かったのだった・・・・・



by glass-jaw-hopper | 2008-05-30 01:10 |

ガラスの顎のリスクでジャンプし続けるバッタ
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